2019
2019年3月20日(水)~3月31日(日)
門司港美術工芸研究所 福岡
つなげていく
大積神楽
時代が移り変わっていっても
変わらない人々の祈りがある
大積神楽は、北九州市門司区大積の鎮守の社、天疫神社の氏子によって奉納される里神楽で、北九州市無形民俗文化財に指定されています。使用されていた道具から江戸時代末期には奉納されていたことが推察されます。現在8演目の神楽が毎年11月3日の天疫神社祭りに奉納されています。2016年秋に、その練習風景を取材させていただく機会がありました。小学生、高校生から80代の相談役まで…世代を超えて繋がり、地元に伝わる伝承文化の継承保存に務めていて‥そうやって文化が受け継がれていく。素晴らしいと思いました。
その後、毎年秋には取材を重ね、少しずつ描いています。
浦安の舞 ( 巫女舞 )について
昭和天皇の御製「浦安」に振り付けされた舞で世界の平和を祈念されています。下関 赤間神宮より伝授された舞で、これも海午前様のご縁かと思われます。前半は扇の舞、後半は鈴の舞の二部になっています。
「天疫神社秋祭り 奉納神楽のご案内」より出典
一般社団法人日本水墨画美術協会主催の雪舟サミット山口 「日本水墨画美術協会展2021」(公募展)において、作品「御先神楽」が『優秀賞』(作家部門)を受賞しました。
詳しくはこちら(外部リンク)をご覧ください。
御先神楽 ( みさきかぐら )について
この舞は、幣方(へいかた)の舞、注連切(しめきり)の舞、幣方と御先の神の追廻し、御先の神の託、御先の神礼の舞の五部となっています。
幣方の舞は、平和の世を神に感謝し天津神に捧げるために四方に注連縄を張り、神様のために結界を作ることを表現した舞です。
注連切りの舞では、天津神に対しての国津神の象徴である「御先の神」が自分達の世を取り戻そうと、幣方の作った聖域に乱入し、注連縄を切ろうと暴れます。次に幣方と御先との問答があり、幣方は御先の神を 伏(しょうふく)し
平和な世界を取り戻します。幣方は左手に大幣、右手に小幣を持ち、御先の神は右手に扇、左手に仕官杖を持ち、「御先の神」の面をつけます。注連切りの舞における御先の神の左右に動く荒々しい所作は、注連縄を切り自らの縄張りを主張することを表しているといわれます。(御先の神は国津神全員の象徴の大変力強い神様で、鬼ではありません。)
「天疫神社秋祭り 奉納神楽のご案内」より出典
天津神・国津神 (あまつかみ・くにつかみ)
日本神話に登場する神の分類で、大国主(国津神の最高神)など、天孫降臨以前からこの国を治めていたとされる土着の神(地神)を「国津神」、天照大神などがいる高天原の神を「天津神」という。
御先神楽は舞の途中で幼児を抱きます。御先の神に抱かれた幼児は一年無病息災で過ごすという縁起があります。
うちの子もぜひと差し出されてしまうのですが、子供の目線で描いたら、世にも恐ろしい絵になりました。
奥歯が見えるほど叫ぶことは大人になると中々ないような気がします。子供の顔の左半分は悲しい表情、右半分は怒り表情の様に感じられ、複雑な心境が伺えました。子供の気持ちと裏腹に会場はなんともにこやかなムードです。
岩戸神楽について
天岩戸開を主題として演じられる神楽です。
天照大神(あまてらすおおかみ)が天岩戸(あまのいわと)にお隠れになって世の中が騒然としています。それを憂い悲しんだ神々の長老である思兼命(おもいかねのみこと)が神々を集め、知恵を授けます。太玉命(ふとだまのみこと)が岩戸広前を清め、金富命(かなとみのみこと)が邪気を払います。受売命(うずめのみこと)が舞を舞い、手力男命(たじからのみこと)が岩戸を開きます。
このように、岩戸神楽はそれぞれの命の舞、五番で構成されています。
大積神楽の納めの神楽で、岩戸が開かれ天照大神のご神体を掲げ持つ思兼の命を先頭にそれぞれの命が後に続き退場したところでお開きになります。
「天疫神社秋祭り 奉納神楽のご案内」より出典
天照大神…日本神話の主神、女神と解釈され、高天原を統べ、皇祖神にして日本国民の総氏神であるとされる。『記紀』において、アマテラスは太陽神の性格と併せ持つ存在として描かれている。
記紀…『古事記』の「記」と『日本書紀』の「紀」を併せて「記紀」という。
会場の様子
取材の様子
2018秋
大積神楽保存会の皆様 ご協力ありがとうございました。