安枝尚美絵画展
マングローブ林の輪
a ring of mangrove forests
2020
2020年9月27日(日)~10月18日(日) 門司港美術工芸研究所 福岡
A ring of mangrove forests~マングローブ林の輪~
マングローブ、海の命のゆりかご
淡水と海水が混ざるその場所に細く長い根を絡み合うようにおろし
広がるマングローブ林には沢山の小さな命が育まれています。
2019年1月と12月にインドネシア共和国スラバヤ市を訪れる機会がありました。雨期でしたが、天候に恵まれ現地の方に船を出してもらい、マングローブ林の取材をしました。
熱帯に属する気候、無数に飛び立つ鳥、野生の生き物、それを育む生態系…
川を抜け、広がる干潟と海にも数えきれない鳥の群れが。
マングローブ林では沢山の生き物が見つけられました。
インドネシアで滞在制作とワークショップをする予定だったので、
その会場の候補の一つ、「ガゼボ」に行きました。
船を岸辺に着け、竹で作られた長い遊歩道を歩いてマングローブ林の中を抜け、
陸と海をつなぐ空中の通路を渡った先、海の上高くにガゼボはありました。
広がる海と渡る風が涼しく、屋根の椰子が揺れる腰壁の外
下をのぞくと、引き潮の干潟にシオマネキやムツゴロウがいました。
竹で作られたガゼボの開放的な造りは素朴で心地よく
自然と調和しているように感じられました。
でも、そこにたどり着くまでに歩いた林の中には
マングローブの根の間にも入り込む大量のプラスチック系漂着ごみが
見渡す限り地面を覆っている場所がありました。
豊かな自然が残る一方では、都市生活が大きくなり、都市から河川に流れ着くごみがマングローブ林に何トンとうちあげられ、地域のNPOの方が片付けたり、行政で回収したりしているそうです。
インドネシアにおいては廃棄物処理能力が不足していたり、再資源化の重要性についての意識の普及が不足したりすることで、ごみの適正処理がされないまま河川などに投棄され、流域の自然環境に悪影響をもたらしている現状があるそうです。
雨が降り、地を潤し、植物が育ち、それを食する生物がいて
大きな循環の中に地球の生き物は暮らしているのだけど
人はそのバランスを崩してはいないか
便利な暮らしの在り方が、ほかの生き物の暮らしを圧迫していないか…
遠い国の話ではなく、例えば、日本から排出されるプラスチック廃棄物は年間9.4百万トン/年で、アメリカに次いで世界2位の量と言われ、私たちの暮らし方は環境の自浄作用を超える汚染を引き起こしていないか心配になります。
今年の夏に再度インドネシアを再訪問する予定でしたが
コロナウイルスの世界流行で出国できる状況ではなく、延期となりました。
様々な社会の活動の自粛により、環境の改善が見られたと報じるニュースを見て思うのは、暮らしのあり方を振り返るころなのかな…と絵を描きながら考えています。
私たちに出来ることはなんだろう?と
2020.9 安枝 尚美